2017年09月 / 08月≪ 123456789101112131415161718192021222324252627282930≫10月

--.--.-- (--)

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--:--  |  スポンサー広告  |  EDIT  |  Top↑

2012.10.27 (Sat)

チェンバロのインハーモニシティ

P1090106.jpg

チェンバロはモダンピアノと比較し,インハーモニシティは少ないと言われます.今回交換した弦に付けられた試験成績書にはインハーモニシティの計算に使用するパラメータ(縦弾性係数)も含まれていました.折角なので,計算して両者の差がどの程度あるものか検証してみることにしました.

インハーモニシティの計算式には幾つかの種類が提案されていますが,厳密なモデル化は現在でも完璧には為されていません.この為,こちらのように近年でも新たなモデル式が提案され続けています.今回は弦の曲げ剛性を考慮した基本式である,フレッチャーの式を用いて検討を行います.

基本周波数に対し,弦の曲げ剛性によって引き上げられるセント数inは係数Bと倍音次数nを用いて次のように表されます:

in1.jpg
係数Bは弦の縦弾性係数E,直径d,張力T,有効弦長lを用いて求められます:

in2.jpg

これにより各倍音次数でのインハーモニシティ量が求められます.
さて,この式で注目すべき事は,係数Bのパラメータにある弦張力Tが分母側に着ているということです.往々にして,張力が弱いチェンバロやヴァイオリン・ギター等の弦楽器と比較しモダンピアノは張力が高い為インハーモニシティが問題となるという説明が為されますが,式から判るように弦張力はむしろインハーモニシティを減じる側に作用する事がわかります.
さらに,係数Bにある弦張力Tを下記のテイラーの式で置換え,基本周波数fと弦の有効長l,密度ρ,直径d,縦弾性係数Eで表してみます.

in3.jpg

この式から判るように得たい周波数を定数とした際,係数Bは弦直径の2乗に比例・弦長の4乗に反比例しますから,インハーモニシティを減じる事を考えた場合,弦径を小さくする事,そして特に有効弦長を長く取る事が効果的であることがわかります.これはピアノで,アップライトよりもグランド,小さなグランドよりもコンサートグランドの方が特に低音部で音が気持よく響く要因の一つです.
それではインハーモニシティが特に顕在化する高音側はスペースの制約はないのだから,弦長をもっと長く取れば良いのではと考えるかも知れません.しかしテイラーの式からわかるように,より長い弦長でも同じ周波数を得ようとすれば弦長の2乗に比例した弦張力が必要となり弦断面に作用する応力も当然増大します.このことから,弦の材料強度上の許される範囲(=断弦しない範囲)でしか弦長を伸ばすことはできません.
モダンピアノで,例えば4cent以上のインハーモニシティを生じてくるd3(1176Hz)以降の音域での弦に作用する応力を計算すると,大凡1500~2500MPaまで達していることが判ります.JFEスチールおよび鈴木金属工業のピアノ線に関する資料によれば,この音域での弦径に対応する引張強さは2000~2600MPa程度です.さらにハンマーによる打弦で瞬間的には前述以上の負荷を繰返し受ける事を考えれば,既に現代技術での限界値である事が判ります.

さて,今回のスピネットについて,上式を用いて計算を行った結果が以下になります:

計算シート
inh.jpg

さらにヤマハのアップライトピアノのデータを元に計算した調律曲線を描き,さらにスピネットの場合の調律曲線を重ねあわせてみたグラフが次になります.このようにピアノと比較すると,スピネットでは殆どインハーモニシティがない事がわかります.
tuning_stretch_20121027044542.jpg    
この差が生じる理由は両者の弦のパラメータを比較すると明白です.このスピネットの弦長は低音域ではピアノに対し最大約300mmも長く,中~高音域でもピアノと同等~80mm程短い程度,さらに弦径はピアノに対し全音域で15~45%程度の太さしかありません.いずれも,フレッチャーの式の係数Bに4乗・2乗で効果が現れるパラメータですので,最終的にこれ程の差が生じたものと考えられます.

以上から,チェンバロではインハーモニシティは殆ど無視しても差し支えないことがわかりました.
スポンサーサイト
07:00  |  調律  |  TB(1)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2012.10.07 (Sun)

Cleartuneのプリセット音律解析②

今回作成した分析シートの使用方法を解説します.

分析シート(ZIP圧縮 Excel2003形式)

table.png
ファイルをExcelで開くとTableシートが表示されます.下に並んでいる数字のシートはTableシートB列にある番号に対応しており,各音律の分析結果が表示されます.

cent_table_20121007175247.png
音律データは全てTableシートのCent from Temperament root(音律ルートからのセント値) に入力に行えば,各値が算出されます.例えば平均律では,Cを起点に100セントずつ規則的に1100セントまで振られています.1から22番目まではCleartuneのプリセット値の解析結果で,23から33まではユーザ独自音律用のスロットにしています.試しに30まで,Cleartuneではプリセットされていない音律を入力しておきました(オリジナルのキルンベルガー第三法は24番です).

dev_eq.png
Cleartuneにインプットする値は右のDeviation from equal temperament(平均律からの偏差)になります(左表の値を元に計算されます,赤字はマイナス値).ユーザ独自の音律を登録したい場合は左側の表に入力を行った後,各数字シートで分析結果を確認し,Tableシートに戻って右側の数表値をCleartuneにインプットすれば良いのです.

Tableシートの下部にあるCalculation parameters(計算用のパラメータ)はそれぞれ下記の通り,各音律の分析の際に使用されます.
calc_parameters.png

・Temperament Root:音律のルート音名です.分析表と五度圏の音名位置がシフトします.
・a1 = [Hz]:a1の周波数.唸り回数の計算に使用.
・Diff. of perfect 5th:純正完全五度のセント値.入力不要.
・Diff. of perfect maj. 3rd:純正長三度のセント値.入力不要.
・Diff. of perfect min. 3rd:純正短三度のセント値.入力不要.
・Pythagorean Comma (P.C.):ピタゴラスコンマ値.入力不要.
・Syntonic Comma (S.C.):シントニックコンマ値.入力不要.
・Threshold of Good diff. cent:良好と判断できる,純正からの偏差.
・Threshold of Allowable diff. cent:許容できる限界とする,純正の偏差.
・Threshold of Good beat:良好と判断できる,唸り回数.
・Threshold of Allowable beat:許容できる限界とする,唸り回数.



result.png
次に各音律分析シートの見方です.1/4S.C.ミーントーン(シート5番)の結果を例に見てみます.

上側に指定した音律ルートからのセント値が表示され,続いて各列の音名で五度,長三度,短三度を取った場合の協和度の分析結果が示されます.五度の結果を例にすると以下になります.

・Difference from lower note:五度のセント値.
・Dev. From perfect 5th:純正完全五度からの偏差.
・Ratio of P.C.:五度のピタゴラスコンマに対する比率
・Ratio of S.C.:五度のシントニックコンマに対する比率
・Freq. ratio:周波数比率.
・Beat/sec [C-]~ [c1-]:各音域での唸りの回数.

純正からの偏差と唸りの回数については,Tableシートで入力したCalculation parametersに対応して,緑・橙・赤に塗りつぶされますので,視覚的に協和・不協和の場所が判ります.

下側の五度圏は上の表値を使用して作成されている為,表だけでも十分ですが,視覚的に各音律の思想が判るので分析に便利です.

・各音のセント値と五度間隔の分析
 外側に各音名のセント値が,内側に五度間隔での純正からの偏差がわかります.この場合,Gis-Es間が約35セントも広く,ヴォルフが存在することが判ります.
5th_5.png
・五度間隔のピタゴラス/シントニックコンマ換算比
 古典調律の場合,五度間隔をピタゴラス/シントニックコンマを分割して規則的に配する事が多々あります.この配置を知ることは音律の思想を理解する上で助けになります.この円環では外側にピタゴラスコンマに対する比率,内側にシントニックコンマに対する比率を表示しています.この例では1/4S.C.ミーントーンですので,定義通りに1/4シントニックコンマずつ五度を短く取っていることが判ります.平均律であれば,外側の値が全て-1/12になります.
5th_scpc.png
・長三度の純正度の分析
 長三度の純正からの偏差を示しています.例えばC-Eの長三度の値を見たい場合は,矢印の起点であるCの上の値が結果になります.この結果からは,ヴォルフの五度を含むH~Gis間の長三度がやはりヴォルフを含むことが判ります.
5th_maj3.png
・短三度の純正度の分析
 長三度の場合と同様に短三度の場合での結果です.2/7コンマミーントーンの場合は長三度と短三度の不純度が同一となり,1/3コンマミーントーンの場合は短三度が純正に取られます.
5th_min3.png

最後に,五度圏の左にあるSummary表には五度・長三度・短三度での最良・最悪のセント値が表示されます.

summary_table.png

◆サンプルで入れたユーザ音律の解説
・23:プレトリウス(?)のミーントーン修正法
 1/4S.C.ミーントーンのヴォルフを緩和するため,ヴォルフの両端のミーントーン五度をピタゴラス五度に置き換えた修正法.平島達司氏・野村満男氏の著作で紹介されているが,出典が不明瞭.

・24:キルンベルガー第三法
 正しいキルンベルガー第三法の音律.

・25:キルンベルガー第一法
 純正律7音階に純正5度を続けた音律.D-A間に不純な5度.Ramisの音律とスキスマを含める五度の位置が異なる.

・26:キルンベルガー第二法
 第一法のD-A間五度偏差を分割しD-A,A-E間に分散した.発表当時の評判は良かったとのこと.

・27:A.シュニットガー(?)の音律
 プレトリウスの修正法を同じ思想でさらに進め,Gis-Es両端4つの五度をピタゴラス五度で置換したもの.平島達司氏・野村満男氏の著作で紹介されているが,出典が不明瞭.

・28:G.ジルバーマンの音律
 1/4ミーントーンに考え方は似ているが,1/4S.C.ではなく,1/6P.C.で五度を短縮した音律.Gis-Es間にヴォルフが生まれる為,バッハとこの存在を巡って論争したとの話は有名.この1/6P.C.を1/12P.C.五度にすれば,平均律になる.

・29:A.ジルバーマンの音律
 キルンベルガー第三法に似ていて,C-E間の五度をミーントーン五度として純正長三度を作り,残ったスキスマを均等に8つの五度に分散させた.

・30:バッハ・レーマン調律
 2004年に発表された音律.バッハの平均律(正しくは"適切に調律された")クラヴィーア曲集第一巻の自筆譜表紙に描かれた唐草文様に音律の鍵があると解釈し発表されたもの.バランスが良い音律で近年では使用する奏者も多い.

*分析シートの正確性について
計算式・初期データ等に誤りがある可能性も十分あります.お気づきになった点がありましたら是非御連絡下さい.

20:49  |  調律  |  TB(1)  |  CM(4)  |  EDIT  |  Top↑

2012.10.07 (Sun)

Cleartuneのプリセット音律解析①

tuner.jpg

チェンバロの場合,ピアノと比較するとかなり頻繁に調律を行う必要があります.1日経っただけでも注意深く聴けば何らかの狂いが生じていますし,1週間も経てば我慢出来ない程の唸りが出てしまいます.またチェンバロでは調律法に平均律を使用することは稀であり,さらに楽曲に合わせて適切な調律法を奏者が選択する必要がありますので,基本的には奏者が調律を行うことになります.

チェンバロに興味があっても,メンテナンスとこの調律が難関と考える方が多いようですが,実際に日々ユーザが行うアクションは慣れれば難しくありません.特にスピネットの場合は8フィート一列だけですので,完全に狂っていたとしても15分程度で全音域調律できます.但し,ヒストリカル楽器の場合は温度・湿度・日照管理等,設置場所に関しての気遣いは必須です.今回の楽器や東海スピネット等のモダン楽器の場合は構造が堅牢で,アクションも環境変化を比較的許容する作りになっています.私の設置場所も楽器にとってはお世辞にも良い場所ではありませんが,今の所トラブルはありません.

各音律に合わせた調律を実施する際,五度・三度で現れる固有の唸り回数を聴きながら行うのも良いのですが,時間が掛かりますし,熟練も要します.そこで一般的には分解能が高く,古典調律(古典音律)にも対応したチューナを使用します.アマチュア向古典調律対応チューナとしては,これまでKorg社のOT-12(上写真右.現在はモデルチェンジしOT-120.外装のみの変更と思われる)がデファクトスタンダードでした.しかし,近年のスマートフォンの普及に伴い,OT-12よりも機能的に優れるアプリケーションがリリースされています.

Cleartune_SS (3)  Cleartune_SS (1)  Cleartune_SS (2)
Bitcount社の"Cleartune"がそれで,iPhoneとAndroid端末に対応しています.上はAndroid端末でのスクリーンショットです.この"Cleartune"のOT-12に対し機能的に優れている点は以下です

・計測した音の周波数がリアルタイムに表示される
・セントメータの視認性・分解能が高い.
・古典音律時の調律ルートが任意に指定できる(OT-12の場合C固定)
・多くのプリセット古典音律に加え,ユーザの独自音律が登録できる.

上のうち,特に下の2点は,チェンバロに限らず古典音律を使用する者にとっては助かります.またスペック上の機能は優れていても,基本的な性能が劣っていると問題ですが,OT-12と並べて計測しても精度・感度共に全く遜色ありません.価格は僅かに¥350です.

このように,"Cleartune"は優れたチューナアプリケーションですが,プリセットされている各古典音律のセント値がマニュアル等に掲載されておらず不明でした.勿論,各音律名称に合わせて基本的なマッピングは決まっていますが,ヴォルフの分散法に複数の解釈がある調律法(Rameau等)やそもそもセント値が正しいかについては予め確認しておく必要があります.

そこで,各音毎に表示される周波数値を元に,各音律に設定されているセント値の逆解析を行いました.また同時に,各音律の分析・ユーザ独自音律考案の際にも役に立つ,五度圏表示等の機能を持たせた分析シートを作成しました(セント値を与えれば,分析値結果・5度圏が自動計算されます.使用方法は後述).

分析シート(ZIP圧縮 Excel2003形式)

分析結果のサマリーとしては下図の通りです.

cent_table.png

結果は若干見たのみですが,下記の事が判っています.

・ヴァイオリン族として登録されている音律はピタゴラス律と全く同じ(この為,上表には不掲載).
・ラモーはF~Hをミーントーン五度で取り,両端に純正五度を配し,残りでヴォルフを吸収している.
キルンベルガー第三法のマッピングに誤りがある.

中でもキルンベルガー第三法は,ヴェルクマイスター第一技法第3番等と並び比較的良く使う音律ですが,キルンベルガー提案のオリジナル音律とは一部異なっていることがわかりました.調律ルートをCに取った場合,本音律ではC-E間を純正三度とし,それを挟む4つの五度はミーントーン五度で取ります.そして,それ以外の五度は基本的に純正に取りますが,ピタゴラスコンマ(P.C.)とシントニックコンマ(S.C.)の差=スキスマ(1.9537セント)を吸収する必要がありますので,Fis-Cis間を700.001セントと純正より僅かに小さな値に取ります.しかし,Cleartuneのプリセットではデータを見れば解るように,C-E間の五度をミーントーン五度とせず,"純正五度-P.C./4"としてスキスマも入れてしまっています.この為,C-E間は純正三度となりません.(これは平島達司氏の「ゼロ・ビートの再発見」に野村満男氏の紹介として掲載されている"簡易なウェル・テンペラメント"に他なりません)

今回公開の分析シートにはオリジナルのキルンベルガー第三法にする為のユーザマッピング値も載せましたので,これを入力することで正しい調律が可能になります.

【続く】
20:46  |  調律  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

2012.09.15 (Sat)

弦の交換④

必要な弦の交換を行い,全ての音が鳴るようになりました.さて,今回は弦交換と同時に音質改善効果を狙って,標準の張弦仕様から一部の音域にて材質変更を行っています.修復前の検討で,仕様変更内容として下記を定めました:

  1) 低音域は,鋼弦から振動減衰能の低い黄銅弦の担当音域を現状のGからHへ拡大する
  2) 高音域は,鋼弦から振動減衰能の高い軟鉄弦を採用し,高次倍音を抑制する

1)は聴感上音が丸すぎるGisからHの高次倍音を残すため,2)はプラッキングレシオの関係から高次倍音が出過ぎる構造上の問題を緩和するためでした.この変更効果を検証する為,変更前後での倍音構成の分析を行いました.
ISO226.png

参考データとして音量レベルの評価の際によく用いられる等ラウドネス曲線を示します.スペクトルに現れてくる音圧レベル(dB)は,音圧(Pa)を評価しやすくする為に基準値と常用対数で変換した値(音とは媒質の圧力変動によって伝播するものであり,音量は大気の標準圧力(大気圧)からの変動幅として現れる.極低音を大音量で聞くと体全体で振動を感じるのはこの為)ですが,一定の音圧レベルでも聴感上の音の強さは周波数によって変わります.例えば上図でフォン(1000Hz時の音圧レベルdBと同値)として現れている曲線に沿って,各周波数に対応する音圧レベルが,同じ音の強さとして人間に認識される値です.いずれの曲線からも,低い周波数側では600Hz程度を境に飛躍的に曲線は上昇し,同じ音の強さとして認識するにはかなり音圧レベルを上げないといけない事,高い周波数側では3000~4000Hzが最も人間にとって感度が良い極大値を示す事がわかります.この曲線は等ラウドネス曲線(ISO 226:2003)と呼ばれ,曲線を作成した人物に因みフレッチャー・マンソン曲線,ロビンソン・ダドソン曲線とも呼ばれます.

【鋼弦から鉄弦への変更効果】

c2_100.png
c2 / 100ms
c2_500.png
c2 / 500ms
c2_2000.png
c2 / 2000ms
c2を例として,撥弦の瞬間から100ms,500ms,2000msの3時点でのスペクトル分析結果を上に示します.赤が鋼弦,緑がヴェストファリア鉄弦での結果です.(200Hz以下のランダム線はノイズ)
まず100ms時の結果ですが,非常に早い時点であり,装飾音や早いパッセージでの聴感に対する評価になります.高次倍音の領域では一部を除き鉄弦の方が音圧レベルが低いことが判ります.これは特に等ラウドネス曲線で感度の高い3000Hz近傍で顕著です.そもそも,今回の弦仕様変更はあくまでも減衰能の比較による選定であり,音の立上がり時の周波数特性は考慮していません.従って,結果は成り行きだったのですが,期せずして狙いに沿ったものとなりました.
次に500ms時の結果です.こちらは比較的ゆっくりしたテンポで奏した時の評価になります.基音~3次倍音では同等の減衰レベルで余り差異は見られませんが,4次倍音以降では鉄弦が優位に抑制できていることが判ります.7000~10000Hz付近では鉄弦の方が残っていますが,聴感上の感度はかなり減じている領域であり,結果的には問題ありません.
最後に2000ms時です.こちらは,特に長く伸ばされる和音,終曲部での印象に対する評価になります.スペクトル分析では鉄弦の3次倍音以降は検知できていません(実際には僅かに鳴っていますが,マイクロホンの出力が低く現れていない)が,鋼弦では依然幾つかの周波数帯が残っています.
以上の結果から,高次倍音を抑制する効果は数値上でも現れており,当初の目標が達成できました.聴感上も,変更前のシャンシャンした音が若干和らぎ,太さを感じる音となりました.

【鋼弦から黄銅弦への変更効果】

GIS_100.png
Gis / 100ms
 GIS_1000.png
Gis / 1000ms
 GIS_3000.png
Gis / 3000ms
 
Gisを例として,撥弦の瞬間から100ms,1000ms,3000msの3時点でのスペクトル分析結果を上に示します.
100msでは,黄銅弦の方が基音に加え3次倍音までが若干低いですが,感度は低い領域であり,大きな差はないと言ってよいでしょう.4次以降は感度が高くなる周波数帯ですが,上図のように4・5次では黄銅の方が高い音圧レベルとなっており望ましい結果です.しかし,6・7・8次では鋼弦の方が高くなりました.特に感度の高い3000Hz近傍では黄銅弦が優位です.
1000msでは先の3000Hz近傍の優位性が特に進み,多くの高次倍音が残存していることが判ります.
3000msでは900Hz~2000Hzの領域で,一部は鋼弦が優っているものの,鋼弦では消失した周波数帯が黄銅弦では残っています.
以上の結果から,全領域での優位性はないものの,感度の高い2000~4000Hz近傍での高次倍音は定時間経過後も残存する傾向にあり,狙い通りになりました.聴感上はC2での改善程ではないものの,丸い音にスパイスが加わった音になりました.
21:25  |  修復  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑
 | BLOGTOP |  NEXT
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。